GISおよびIT/ICT技術に関して、4DGIS Labが独自で研究した事案やサポートさせていただいた研究の成果等をご紹介いたします。

 

梅雨入り・梅雨明け状況の視覚化
~予報に関する地域区分と梅雨に関する統計値の統合~

春から夏へ移行する過程にある梅雨は、その前後の季節と比べて雨量が多くなり、大雨による災害の発生しやすい時期です。
気象庁から発表されている梅雨に関する当年速報値・昭和26年以来確定値と、同じく気象庁から公開されている予報に関する地域区分GISデータを、4DGISLabが統合・編集・加工して、WEBマップとして視覚化しています。

 

マップ 『梅雨入り・梅雨明けマップ』
地図ブロック(左部)
・予報区ポリゴンに、梅雨に関する気象庁統計値(速報値・平年値)を結合しています
・当年の梅雨3状態(梅雨入り前・梅雨入り・梅雨明け)によるシンボル表示設定です
・速報値と平年値は、ブロック下部“マップ表示年 コントローラ”で表示切替が可能です

速報値ブロック(右上部)
・当年速報値と平年値の比較用として表形式で表示しています
・横軸に予報区、縦軸に梅雨に関する当年速報値・平年値を設定しています
・セル内表示は右記の通りです [ 上段…梅雨入り日 下段…梅雨明け日 ]
・セル内傘マークは地図ブロック同様、当年の梅雨3状態によるシンボル表示設定です

統計値ブロック(右下部)
・梅雨入り・梅雨明け・降水量平年比の確認用として表形式で表示しています
・横軸に予報区、縦軸に1951年までの梅雨に関する統計値を設定しています
・セル内表示は右記の通りです [ 上段…梅雨入り日 下段…梅雨明け日 ]
・セル内傘マークは、降水量平年比によるシンボル表示設定(大小&色分け)です
・降水量平年比は、セル内傘マークのマウスオーバーで確認することが可能です
梅雨入り・梅雨明けマップ

画像をクリックすると別ウインドウが開きます

注意点
・気象庁発表では日付に“ごろ”が付きますが、文字数の都合で“ごろ”を除いています

 
マップ 『梅雨時期の降水量平年比マップ』
上記マップと同じデータから、梅雨時期の降水量平年比(1951年~2021年)を視覚化したものです。
基本的な部分については同様の構成としていますが、以下の点において相違があります。

地図ブロック(左部)
・1951年~2021年の梅雨確定値のうち、降水量平年比によってシンボル着色を変えています
 (赤=平年より少ない ⇔ 青=平年より多い)
・中央下部の“マップ表示年コントローラ”で1951年~2021年の降水量平年比を表示可能です

速報値ブロック(右上部)
・統計値の確定により削除

統計値ブロック(右下部)
・平年値と当年2021年の確定値を含む1951年から71年間の統計値を表示しています
梅雨時期の降水量平年比マップ

画像をクリックすると別ウインドウが開きます



 
作業期間
システム設計:2021年5月21日~6月27日
データ更新 :2021年5月21日~ 継続中

 
作業環境
データ入力  :Googleスプレッドシート
データ編集  :QGIS 3.10
データ視覚化 :Tableau Desktop 2020.4.1

 
データソース
図形データ:全国・地方予報区
        形式:Shape
        更新:2018年10月16日
        出典:気象庁ホームページ
属性データ1:令和3年の梅雨入りと梅雨明け(速報値)
        形式:HTML(表形式)
        更新:2021年5月21日より随時確認
        出典:気象庁ホームページ
属性データ2:昭和26年(1951年)以降の梅雨入りと梅雨明け(確定値)
        形式:HTML(表形式)
        更新:2021年5月21日より随時確認
        出典:気象庁ホームページ

 
キーワード
・気象予報に関する予報区ポリゴンデータの軽量化
・梅雨関連統計値(1951年以来)のGISデータ統合
・WEBマップとしての視覚化および表示調整

 
作業概要
季節予報で耳にすることの多い○○地方。
具体的には…、新潟県の属する北陸地方って、どこからどこまで???
地方季節予報として発表される梅雨入り・梅雨明け情報の視覚化に併せ、この“予報区”の位置関係を地図上で把握するところから作業を開始しました。


【コンセプト】
・気象庁公開オープンデータの把握と活用

地方季節予報の予報区分(出展:気象庁)


・時間をキーとするデータ視覚化手法の検討


【気象データについて】
地方季節予報として発表される梅雨情報は、気象に適した形状となるように都道府県が集約された“予報区”ごとに発表されます。
気象庁ホームページで公開されている多様な形状データが含まれているGISデータから、梅雨情報を格納するポリゴンデータへの編成を行いました。
また、梅雨入り・梅雨明けの速報値および昭和26年以降の統計値(確定値)は、それぞれHTML内に表形式で記述されています。
この表をGoogleスプレッドシートに張り付けて体裁を整えた後に、GISデータとのデータ結合を行いました。


【データの軽量化について】
下記の72個の属性情報を、GISデータへの結合対象としました。
・昭和26年(1951年)から令和2年(2020年)までの70年分の確定値
・過去30年分の気象データから作られた平年値
・令和3年(2021年)における速報値

ポリゴンと属性が1対1のデータ結合になるか、1対多のデータ結合が可能か、これについては視覚化ツール毎に可否と手法が変わってきますが、少なくともGISデータ×72のデータサイズになると見積もりました。
予報区ポリゴンの生データが42.66MBだったので、総量では3071.5MB(3.0GB)になってしまいます。
このため以下の処理を加えてデータサイズを2.09MBに、総量でも150.5MBに抑えました。
・頂点の間引き(20m)
・一定面積以下ポリゴンの削除(10000m2)

また、1対1のデータ結合によって72レイヤを作成して視覚化することが現実的に有効な視覚化と考えられなかったため、1ポリゴンに対して72属性のデータ結合が可能なTableau上での視覚化を行いました。


【統計データの表現について】
台風進路軌跡のような連続性があるデータについては、マップを用いた視覚化も有効であろうと考えますが、今回の梅雨情報については各年の特徴の視覚化と把握が重要であると考え、クロス集計表によって統計データを視覚化しました。
また、梅雨入り・梅雨明けの日付については文字による表現とし、降水量平年比の値については100%を中央値にして傘マークの大小&色分けで表現しました。


【考察】
当初は文字情報を基に、馴染みある都道府県ポリゴンを予報区ポリゴンへ集約することを考えていましたが、様々なオープンデータが公開されるようになっている昨今、
・必要なデータを如何に用意し、如何に視覚化するか?
この起想力に掛かるウェイトが増してゆくように感じました。


【追記】
視覚化ツールとして使用しているTableau主催コンテスト“Iron Viz 2021”に出展しました。(2021/7/3)
2021年の梅雨確定値の発表をもって、“梅雨時期の降水量平年比マップ”を作成しました。(2021/9/9)
5月上旬の沖縄・奄美の梅雨入り発表を受け、“梅雨入り・明けマップ”の更新を再開しました。(2022/5/16)
2022年の梅雨確定値の発表をもって、“梅雨時期の降水量平年比マップ”を再作成しました。(2022/9/2)
例年より更新開始が遅れてしまいましたが、“梅雨入り・明けマップ”の更新を再開しました。(2023/6/26)

 
出展
以下の原典データに対して、4DGISLabが編集・加工を行っています。

「全国・地方予報区」(気象庁)
「令和3年の梅雨入りと梅雨明け(速報値)」(気象庁)
「昭和26年(1951年)以降の梅雨入りと梅雨明け(確定値)」(気象庁)

 
参考情報
この取組みに関するタイムラインは、以下からご確認いただけます。

2021年5月24日公開『梅雨入り・梅雨明けマップ(仮)』
2021年5月31日公開『つれづれ日記』
2021年6月21日公開『ちょびっとIoT』
2021年7月03日公開『IronViz2021に申し込みました』
2021年7月14日公開『VizとIoTと災害』
2021年9月09日公開『梅雨時期の降水量平年比マップ』
2022年5月23日公開『梅雨入り・明けマップを再開しました』
2022年7月08日公開『早い梅雨明けでしたが』
2022年9月02日公開『早すぎたようです(梅雨明け)』