GISおよびIT/ICT技術に関して、4DGIS Labが独自で研究した事案やサポートさせていただいた研究の成果等をご紹介いたします。

 

災害関連データの収集と視覚化 2022
~令和4年8月1日からの大雨 被害情報のビジュアライズ~

梅雨の末期は梅雨前線の停滞による線状降水帯が発生しやすい時期であり、線状降水帯による浸水被害に加えて、それまでの降雨状況によって軟弱となった地盤の崩壊など、降雨に起因する災害が複合的に発生する危険性があります。
4DGISLabでは、令和4年8月上旬からの大雨ならびに台風8号によって被害を受けた都道府県が発表する住家被害情報を収集・集約し、WEBマップとして視覚化して公開しています。

 

マップ 『令和4年8月1日からの大雨及び台風8号による被災住家状況』
地図内の行政ポリゴンは、人口当たりの被災住家合計によるグラデーション表示を設定しています。
画像をクリックすると地図が開くので、以下の操作を試してみてください。


地図ブロック(左側)
・行政区域にマウスオーバー → 個別属性の表示欄がポップアップ表示
・     〃       → 一覧表内の対応する属性がハイライト表示
(マウスホイールによる拡大縮小 & 左上のコントロールから地図検索が可能です)

一覧表ブロック(右側)
・都道府県名や市区町村名にマウスオーバー → 地図内の対応する行政区域がハイライト表示
・項目(全壊棟数など)にマウスオーバー  → 個別属性の表示欄がポップアップ表示
令和4年8月1日からの大雨 住家被害

令和4年8月1日からの大雨 住家被害(画像をクリックすると別ウインドウが開きます)

作業期間
データ収集・マップ作成 : 2022年9月23日 ~ (更新継続中)

 
作業環境
データ入力  :Googleスプレッドシート
データ編集  :QGIS 3.22.10
データ視覚化 :Tableau Desktop 2022.2

 
データソース
図形データ:行政区域データ(市区町村ポリゴン)
        形式:SHP
        更新:2021年1月1日
        出典:国土交通省国土数値情報
属性データ1:住家被害データ
        形式:PDF・HTML等
        更新:2022年9月23日より随時
        出典:被災情報を公開している19都道府県
属性データ2:住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数
        形式:xlsx
        更新:2022年1月1日
        出典:総務省自治行政局住民制度課

 
キーワード
・災害発生時におけるデータ収集および数値化
・災害関連データのGIS WEBマップ化 & 適時更新
・上記に関する作業効率化
・過年災害(2020・2021年)を踏まえた災害履歴作成

 
災害概要

8月1日~5日の天気図(出展:気象庁)

【災害概要】
8 月1 日から6 日にかけて、日本海から東北地方・北陸地方にのびる前線に向かって暖かく湿った空気が流れ込んだため、大気の状態が非常に不安定となり、北海道地方や東北地方および北陸地方を中心に大雨となりました。
3日から4日にかけて新潟県・山形県では線状降水帯が発生し、複数の地点で24 時間降水量が観測史上1位の値を更新するなど、青森県・山形県・福島県・新潟県・石川県・福井県で記録的な大雨となりました。
その後、前線は次第に南下し、4日は石川県・福井県、5日から6日にかけては福井県・滋賀県・三重県などで大雨となり、これらの大雨により北日本・北陸地方を中心に土砂災害などの水害が発生しました。


【対象行政】
8月1日~31日の間に発生した災害(台風8号による被害を含む)について消防庁が集約した情報のうち、各災害対策本部から情報が公開されている19都道府県の住家被害に関する情報を4DGISLabが収集・集約しました。
 北海道地方1:北海道
 東北地方 5:青森県・岩手県・秋田県・山形県・福島県
 関東地方 2:千葉県・神奈川県
 中部地方 6:新潟県・富山県・石川県・福井県・岐阜県・静岡県
 近畿地方 4:滋賀県・京都府・奈良県・和歌山県
 九州地方 1:福岡県

 
作業概要
【コンセプト】
降雨量期間合計値(8/1~8/6)

降雨量期間合計値(出展:気象庁)


データ収集ならびに視覚化は、以下のコンセプトに基づいて行いました。
・8月1日~31日の間に発生した災害情報の可視化
・データ入力および更新作業の省力化(ファイル構成簡略化)
・過去の災害視覚化事例(2020年・2021年)との共通化


【データ構成】
“データ更新作業の省力化”および“被災行政増加時の編集作業簡略化”を目的にデータ構成を検討した前回2021年の作業事例を踏襲する、以下の3データでの構成としました。
以下の3データについては更新頻度が異なるため、それぞれを独立させ、更新作業完了時に視覚化ツール“Tableau”内で市区町村コードをキーに結合させています。
 1. 住家被害データ(※ 随時更新)
 2. 市区町村ポリゴン(令和3年1月時点)
 3. 市区町村ごと推計人口(令和4年1月時点)


【住家被害データについて】
Googleスプレッドシート“住家被害データ”は全ての市区町村を含む1ファイル構成とし、フィルタを掛けて対象の都道府県のみの表示にしながら作業を進めています。
なお、今回はリモート環境における相互連携作業ではなく、4DGISLab単独での作業であったことに起因するファイル構成ですが、同時編集が可能なGoogleスプレッドシートであれば、複数同時作業も可能であると考えています。

令和4年8月1日からの大雨 住家被害

令和4年8月1日からの大雨 住家被害(9/26)


【市区町村ごと推計人口について】
次年度以降に災害が発生した際には人口を更新する必要があると考えていますが、その際の更新手間を最小限にするため、人口情報を別ファイルに独立させています。
本来、被害の甚大さについては、各市区町村毎の住家棟数データを分母にして指数化したいと考えていますが、オープンデータとして公開されている住家棟数データがないため、これに代わる値として総務省公開の推計人口データを用いて指数化して着色しています。
 被災指数 = 被災住家合計 ÷ 人口 × 100


【更新作業】
定期巡回時のデータ入力からWEBマップの更新まで、今回作業においては以下の2工程で進めています。
 工程1:被災住家情報をGoogleスプレッドシートへ入力
 工程2:視覚化ソフトTableauでデータ読込み&アップロード


【その他】
作業については消防庁が集約した情報を根拠の1つにして進めていますが、消防庁作成の被害報に掲載されている全ての都道府県がホームページから災害情報を発信しているわけではありませんでした。
今回、市区町村レベルという解像度で19都道府県における住家被害状況を視覚化しましたが、他の5都道府県については異なるデータ解像度(都道府県レベル)となるため、この期間の全被害を表現しきれなかった部分を残念に感じます。

 
出典
以下の原典データに対して、4DGISLabが編集・加工を行っています。

「国土数値情報(行政区域データ)」(国土交通省)
「住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数」(総務省)

 
参考情報
この取組みに関連する情報は、以下からご確認いただけます。

2022年9月29日公開『8月の豪雨と台風による災害』